訓練とはいえ、こんな山中で何日も戦争ごっこは嫌になる。
だから、ささいな幸せを求めただけ。
「・・・・・で?一体何をしたの?いいなさいよ、ハボック」
目の前で彼女が眉を寄せて睨みつける。
「なんで俺が訓練で何かあったって知ってんだよ」
「張り出された評価、ひどかったもの!あんなの、誰が見ても分かるわよ」
気の強い彼女。士官学校の同級生で、成績はいつも優秀。
なんで俺と付き合ってるのか、周りの連中は七不思議だと言う。
・・・・・・・・大きなお世話だ。
「もうひとつ腑に落ちないことがあるの」
彼女が眉を寄せながら厳しい顔で言う。
「・・・・何年も兵隊してる下士官を、ひよこの士官学生が指揮するっていうじゃない」
「師団演習だからなあ」
「たいていの学生は下士官に軽んじられて、意思疎通が難しいって聞くわ」
「他の奴とか、けっこう苦労してたもんなぁ。真面目な奴ほど固くて融通きかねえし」
真面目な彼女は厳しい眼差しのまま頷く。
空とぼけた俺は、彼女の意図に気付かない振り。
「なのに、最低評価のあなただけは、下士官達からものすごい気に入られようだった」
「ありがたい話だ」
ますますむうっとした顔の彼女。
どこまで話を知っているのかわからないけど、ネタあかしは今はしない。
「内緒だよ。女子は師団演習とかってないんだろ?」
「男子とはカリキュラムがそもそも違うから・・・ないことはないと思うけど」
「演習で使う山とか、一回も行ったことない?」
不思議そうに首を傾げる彼女に、笑顔で話を持ちかける。
「今度、一緒に行こう。そしたら、教えてやるよ。評価の理由」
「あきれた。その笑顔・・・全然反省してない。だから殴られたのよ」
それだって大きなお世話だ。
演習は演習で、人を実際に殺すわけでもない。
そんな呑気な事実と共に・・・・俺は気付いてしまったから。
綺麗な満点の星空。静謐な空間。冷たい朝の空気。
「・・・・ふうん。訓練じゃなければ、さぞいいピクニックでしょうね」
「下士官達だって、実際の戦場に連れて行かれたわけじゃないしなぁ」
「・・・・まさか、本当にピクニック気分で・・・・」
ふっと笑う俺の顔に、彼女は拍子抜けした顔を返す。
「あきれた大物振りね。ハボックみたいな人、本当に珍しいわ」
そういって、諦めたように笑い出す。
いつもなんでも結局は、面白がって終わってしまうんだ。
でも、今回はそれだけじゃ終わらせない。
「一緒に行く?次の休みの日」
身を乗り出して聞いてみる。
少し迷ったふうだけど、最終的にははっきりと、彼女は頷いた。
演習が終わったら仲間の皆で乾杯しようと思って、酒瓶を何本も土に埋めた。
実はそのうちの数本が見つかって、連中と俺は殴られたし評価も下げられたけど。
変な話、それがきっかけで上官下士官とも、ものすごく意気投合してしまった。
採点する指導教官はカンカンに怒って、事実もろとも隠蔽をしたがった。
だから、師団演習では見本になるくらいの連携を見せたけど、評価は最悪。
俺達はそれを笑ってやり過ごして、本当の戦場では命を預けあおうと肩をたたいた。
土の中に、見つからずじまいの貴重な一本があることは、誰も知らない。
当日は、山に登って、満点の星空、静謐な空間の中、一緒に乾杯しよう。
ワイングラスをふたつなら、小銃を持っていくよりずっと粋な感じがするよ。
そうして、すすき野原に寝そべって、いっぱいいっぱい話をしよう。
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ワイングラスって言ったら、もっと大人なネタがいくらでも思いつきそうなものですが・・・
こういうハボックもいいなあ、なんて妄想して幸せだったので。
実は、ここに載せるにあたり、ちょこっとだけ書き直してます。
いつもは絶対しないんですが・・・わかりにくいところが多かったような気がしたので。
1000hit記念の拍手小話、ハボ版です。