ぜんまいっていうのはとても繊細で、
ほんのわずかな狂いで何もかも駄目になってしまうこともある。

おもちゃに使われるぜんまいは特に繊細で、
ぜんまい仕掛けのお人形なんかが高価なのはそういう理由。
もちろん、機械鎧はいうに及ばず。



「って言ってたの。ウィンリイが」
「鋼の大将の幼馴染と、いつの間に親しくなってんだよ・・・」
「いい子だったわよ。話しやすくて面白くて」



銃を分解して掃除しながら、オイルとタバコの匂いの中
ハボックは面倒くさそうに煙を吐いた。



「ふうん・・・ほんのわずかな狂いでも駄目になってしまう、か・・・」



組み立て終わった銃を点検し終えて、掃除道具の片付け始める。
ハボックは現場が長いだけあって、道具の扱いは早くて正確だ。
私は後を追うように掃除を終えた銃を点検する。


「なんだかこの前噂で聞いた恋愛の話みたいだな」
「ぜんまいの話が?」


ほんのわずかな狂いで、物の動きに影響するぜんまい。
それは確かに運命の歯車にたとえやすく、恋愛にも当てはまるかも・・・?


「なるほどねぇ・・・ハボックって意外と哲学的なのね」
「惚れ直した?」
「ばか。いつ誰が誰に惚れてるのよ」
「惚れてるくせに」
「恋愛は、わずかな狂いで駄目になるんじゃなかったの?」
「それはこの前聞いた恋愛の噂話」



くすりと笑って、ハボックが私の銃を取り上げる。
すばやく点検して、『異常なし』とつぶやく。


「もう。返して」


手を伸ばしてハボックに近づいた私を迎え入れるようにハボックが身体を寄せる。
ふいをつかれるように、キスされた。


唇が離れて、目の前の彼が憎たらしいほどサッパリした顔で微笑む。



「・・・・・・ねえ。どういうつもり?」
「どうもこうも。そのまんま、そういうつもりだけど?」



自信に満ちた顔。いったいどんな根拠でそんな事を・・・



「このしかめ面・・・。もう一度キスするぞ」
「ほんのわずかな狂いで駄目になるのが恋愛なんじゃないの?」


ハボックがニッと笑った。


「そんな機械仕掛けの恋愛なんか知らねえよ。俺は生きてるお前が好きなんだ」
「好きって言ってから、キスするのよ。普通は」


拗ねたように言う私に、ハボックが声を上げて笑った。









コレを書きながら、しみじみハボックが好きだなあと思いました。
同じ目線で恋愛できそうな感じがする。素敵。