唇をかみしめる。
もう習慣のようになっている行為。
自分の無力さを、愚かさを、なぐさめるような。
もしくは・・・そんな気持ちを抑え込むような。
思い切り噛んでいるわけではないから、傍目にはわかりにくいはず。
唇を噛む姿なんて、わざわざ人目にさらすようなマネもしない。
少なくとも今まで不審な目を向けられたり、注意を向けられたことはない。
だが、彼は違った。
ハボックは、そっと手を私の頤に伸ばすと、親指をその唇に押し当てた。
「・・・!!?」
面食らって硬直してしまっている私に、ハボックが静かに言う。
「それ、クセだろ?やめたほうがいい」
身動きしようのない私に、ハボックが顔を近づける。
真摯な瞳。本気で心配してくれているのが、伝わってくる。
「今はまだ紅いけど、そのうち紫にでもなっちまったら、目も当てられないぞ」
私は、ハボックの目を真っ直ぐみつめた。
その瞳は彼の強い意思に似た、力強い光を放っていた。
何もいえないまま、私は彼を見つめ続ける。
「・・・分かった?」
ふ、とハボックが顔を離す。
いつもの優しい表情で、ハボックが私を見下ろしている。
私は、こくんと頷いた。
「・・・・・そんなに、目立つ癖だった?」
「え?」
だとしたら恥ずかしい、と思いながらハボックにそっと尋ねる。
思いがけない質問を受けたみたいに、ハボックが私を見つめる。
瞬間。
「ばか。・・・・そうじゃないよ」
朗らかに笑ってハボックが私の頭をなでる。
引き寄せられた額が、ハボックの額に触れて、顔がすごく近い。
「気付いてるの、多分俺だけだぜ?」
それが、どういうことか分かる?と聞いてくる彼。
なんとなく。・・・・けど、気持ちを確認するのは、勇気がいる。
「頑張りすぎのお前が、心配で気になるんだよ。もっと肩の力を抜け」
「・・・・面倒見がいいのね」
「お前の心が磨り減った瞬間が分かるなんて男、俺くらいだぞ」
「ありがとう」
「ばか・・・好きだって言ってんだよ」
知ってる。
だから、ありがとうって言ったの。
軍人として働くたびに気持ちが磨り減る私を、貴方がずっと守ってくれてた。
さあおいで、と言って導いてくれた。
今までも、これからも、ずっと。
「あなたがいてくれてよかった」
「はっきりしない答えだな・・・」
ため息交じりの彼に、そっとキスをした。
目の前には、少し驚いたような彼の顔。
これからは、唇を噛みたくなるたびに、貴方の顔を思い出す。
そうしてひとつひとつ、一緒に乗り越えていけたらいい。
あなたが導いてくれる限り。
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もともとコレは、ドリーム小説変換ツールを利用させていただくにあたって(いつも本当にお世話になってます)
初心者の私が説明にしたがってきちんと利用できるかどうか、試すために書いたものでした。
だから、本当はすごく短い話(ほんの数行)だったのですが、拍手用にアレンジ。長くしました。
これもストックって言うんでしょうか?わりと描写的には好きな感じです。