お見合いの失敗を大佐に報告した。
予想通り、結果を知った大佐は腹をかかえて笑ってくれた。
それだけで憂鬱さが増す。
「まあいいじゃないか。どうせ君には彼女がいるんだから」
「アイツは別に、彼女じゃないですけど」
「・・・・・・まさか、彼女の気持ちに気付かないほどの朴念仁でもあるまいに」
そういって苦笑する大佐に、それ以上何もいえない。
ため息をついて、執務室を後にした。
気持ちを切り替えようと、タバコを取り出す。
「ジャン。お見合いしたの?」
いきなり話しかけられたから、驚いてタバコを取り落とした。
振り返ると、幼馴染の噂の彼女。
「・・・・・・誰に聞いたんだよ」
「それはー・・・秘密」
「どうせ、大佐だろ」
「大佐だけじゃないよ。みんな言ってたもん」
秘密じゃねえじゃん、と思うが、もうあえて突っ込まない。
何の気もなさそうに上目遣いでのぞきこんでくるのは反則だと思う。
「・・・どうだった?」
「ダメだった」
簡潔明瞭な回答。
彼女は、軽く微笑んだ。
「そっか・・・・残念だったね」
少しは嫉妬とかしないのかよ?
本当に大佐の言うことが当たっているのか、自信がなくなってきた。
あのお見合いを、後からよくよく思い返す。
アームストロング少佐の妹。
上品でおとなしそうな雰囲気。白い顔、長い髪の毛。大きな瞳。
恥らう笑顔。ゆっくりとした話し方。
家柄とか出世とか、そういうのも絡んだけど、本当は・・・
誰を重ねてオールオッケーって思ったか。
一目瞭然じゃないか。なんで気付かなかったんだろう?
髪と瞳の色も違う。顔だって似てない。外見は全然違うのに。
それでも重なったのだ。
でも、本当はおとなしいだけじゃない。
強気で勝気で、そのくせ寂しがりやで涙もろい。
こういうのを、好きっていうんだろうか・・・?
「お前のせいだよ。責任とって俺と付き合え」
ついいつものクセでからかうような台詞が出た。
驚いたような彼女の顔が目に入る。
「断られた俺のこと、かわいそうって思うだろ?」
「かわいそう」
「このやろ」
「・・・・付き合ってもいいよ」
今度はこっちが驚く番だ。
「・・・マジで?」
「うん」
彼女の顔を凝視して、様子を見る。
真っ直ぐ見つめ返してくる彼女は、驚くほど綺麗だ。
「・・・本当は、俺のこと好きなんだろ。
お見合いが上手くいかなくて、嬉しかったんじゃねえの?」
意地をつついてからかうのは、いまや挨拶みたいなものだ。
でも、今回ばかりは様子が違った。
「知らない。もう付き合ってあげないから」
「嘘。・・・・ごめん」
全然怒ってない口調で言うから、どこまで本気か分からない。
今だって、こんな台詞なのに笑いまじりだ。
でも、知っている。本当は真面目なこと。
真面目って言うのは、言葉すべてに嘘がないということだ。
「付き合ってよ」
もう一度、言う。
「どこまで本気かなあ?」
困ったような声。
からかいすぎて、ご機嫌を損ねたのだろうか。
「俺のこと好きだろ?」
「・・・・・」
「好きなくせに」
「・・・・・」
だんまりを決め込んだのか、彼女は返事をしない。
「謝ったじゃんよ。いつまで拗ねてんだよ」
「拗ねてないよ」
彼女の反応にじれて、ついイラついた声を出した。
意外にも、困ったような反応が返ってくる。
「じゃあ何だよ」
「・・・・・・・だって、ジャンが意地悪」
―――――――確かに、そのとおりだ。
「私、ジャンの気持ちがわからないよ。いつもからかってばかりで・・・」
不安だったのか・・・。
幼馴染で妹のような存在といいながら、本気で口説くのが怖かった。
失いたくなくて、失っても惜しくない女ばかりに手を出した。
今だって、こんなに近くにいても、抱きしめることさえできずにいる。
手を出すのが怖いくらい、大事に思ってる。
それがすきだという気持ちなら、なんて不自由なものだろう。
それを言葉にする代わりに、もう一度問いかけてみる。
「・・・・・付き合ってくれんの?」
「・・・・・うん、いいよ」
不安そうな影は消えないけど、それでも微笑む姿は綺麗だと思った。
過ごした時間が長すぎて、急に変化した関係は、戸惑うことも多いかもしれない。
それでも・・・・・・・手に入れた彼女を見て微笑みかける。
帰ってくる微笑。
それは最高の幸せ。
(TheStartingLine最終話HappyStart(原題)の元々の原稿より)
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コレは元々某連載の最終話を、ストックしてたのに全然違う終わりになったので、書き換えてここでお披露目することにしたものです。
なんだか続編、というか番外編?になってなくもないような・・・でも話は繋がってないので、やっぱり別モノ。
拍手で載せたのと少し変えてます。載せた後の推敲はもともとしないほうなんですが、これは特別に。
お題から考えてないじゃん、という突っ込みを自分でしてしまいます・・・もう今更ですが。