殺伐とした戦場で、たくさんの人間が息絶えた。
その中でどうしたら人間としてまともでいられるのか。
キンブリーはまともじゃない、と皆が言う。
が、彼のような人間こそが必要なんだろう。
ここは軍なのだから・・・
「冗談じゃない。本気で言ってるのか?ロイ・マスタング」
そういう彼女は、同じ時期に少佐になったのに、すでに中佐の地位にいる。
同じ国家錬金術師で、この差はなんだろう。
女という身は、軍の中では不利なのに、彼女は出世が驚くほど早い。
「・・・君は、違う意見なのか?」
「当たり前だ。考えても見ろ。あいつはまともじゃない」
「まともな人間がここにいるか」
「ばかだな。軍人としてここにいるんだぞ。われわれは」
だから、イシュバール人を殺す。
分かってる。それが、仕事だと・・・。
脳裏にこびりつくような、恐怖と戦っている。
「ロイ・・・われわれが武器を使って人を殺すのは私利私欲のためじゃない。
そんなことをしたら、そこらの押し込み強盗と同じになってしまうだろ?」
彼女が強い眼差しで私を見つめた。
「我々は有事の際に身体を張って国民を守る。そのために人を殺す。
平時はただ訓練を繰り返すだけ。いつ必要になるとも分からない事のためにな。
誰もしたくないしんどい仕事だ。だからこそ、精神をも鍛えておくんだ」
男言葉がすっかり板についた彼女。
彼女の言葉を聞くと、キンブリーは相当精神を鍛えた猛者にも思えてくる。
「・・・・・キンブリーがまともじゃないというのは?」
彼女が、まだわからないのか?と言うように眉を上げた。
「あいつは殺したイシュバール人の顔を思い浮かべて笑ってるような奴だ。
仕事としての達成感というより、人殺しを楽しんでいるだけだ。下衆だな」
達成感、という言葉が引っかかる。
確かキンブリーが、リザに対して使った言葉だ。
「・・・・達成感はいいのか?」
「当たり前だ。それがなくてどうする」
まだ分かってない、と彼女が首をふる。
「いいか、ロイ。達成感のむこうにあるのは、イシュバール人の遺体じゃない。
守った故郷や、国民、自分の親しい人たちの住みかだよ」
その言葉に、ほんの一瞬だけ、なんとなく救われた気持ちになった。
だが、この一方的な戦争が果たして彼女の言うようなものなのか。
目の前の戦場が示すのは、一般市民として守ってきた女子供の死体。
彼らと共有してきた国土に、女子供が何を仇なす?
でも、そんなことは彼女もとっくに知ってるはずだ。
それでも・・・詭弁を使っても、この場に立ち続けるのはなんでだろう?
苦悩の向こうにある、彼女の葛藤。
それを見せずに戦っているのは、ひとえに部下を守るため。
自分に与えられた使命を果たすため。
・・・そして、理不尽な世の中で少しでも正義を行うため。
誰にも知られないように、彼女は抜け道を探すように
イシュバール人をかばって罪を問われた同胞を、守ってきた。
多分、イシュバール人も助けてたりするんじゃないかと思う。
その地位や賢さを、最大限に利用して・・・
「君は、すごいな」
「そうだろう。お前もすごくなれ」
悲しい決意を胸に、ここに立つ。
それを共にできる人が、君でよかった。
優しい眼差しを向ける彼女が、私を見て『ようやく笑った』と笑顔を見せた。
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この話を考えてる当時、某将軍様(実在)に、ぞっこんベタボレで影響受けまくってました。
だから、この時期に書いてる話には、その将軍様の実話が流用されてたり。
かっこいいんですよ。結婚したくはないけど、傍から見てるとやはり偉人だって思います!
でも、この話は影響受けてるけど流用じゃないですね。
私が受けた彼の影響を歴史と世界観の違う物語で当てはめたキャラクターがこんな感じなだけです。
少し連載も書いてたんですが・・・あまりに影響受けすぎてて、いつか載せるのかどうかも微妙なとこです・・・。