結果。
居酒屋で、、憲兵、ハボック、ブレダ、フェリーが並んで座っている。





「あー・・・この先ずーっと連続勤務が続くと思うと、死にそう」
「ご愁傷様だな、ハボック。まだスカーの遺体あがんないのか?」
「無理だって。ガレキの撤去だって、晴れた日が続けば楽なんだけど」



血まみれのスカーの衣服がみつかって、遺体捜索とガレキ撤去を命じられたハボックの隊。
ハボック自身も昼夜を問わず働いていて、今日もぎりぎりまで現場にいたらしい。



「・・・・ハボック少尉は大変そうだね」
「そう、ね。いつも大抵外にいるし、今すごく忙しそう」


と憲兵がぎこちなく会話する。
お互いに気を使い、笑顔なのに、テンションがおかしい。


やれやれ、とブレダはため息をついた。
巻き込まれる形になったけど、半分は自業自得だ。
他人の恋に首をつっこんだから、こうなるのだ。


「俺は今日は飲む!!飲みまくる!」
「おいおい、明日があるんだろう?」

よくわからない宣言をして、ハボックが酒をあおる。
ストレスがたまっているんだろう。
分かっているけど、いちおうブレダはたしなめた。



「・・・・おいしい」

飲んだことのないカクテルに挑戦したが満足そうに微笑む。
ペースは遅いが、お酒が嫌いではなさそうだ。


ちゃん、次はどれに挑戦してみる?」
「んー・・・オペラハウスって、どういうお酒なのかな?」
「この店のオリジナルだって。聞いてみようか」


の気を引こうと一生懸命なフェリーと、面倒見の良さで徐々に距離を近づけようとする憲兵と、その間に挟まれるようなに、ハボックは気にもとめない。
いいのかなあ、と思いつつブレダも様子を静観するしかない。


「・・・・俺、トイレ」

ハボックが席をたつ。だいぶ千鳥足になっていた。
今をチャンス、と思ったらしい憲兵が、意を決して口を開く。



「・・・・さんはハボック少尉がすきなの?」

憲兵がそう言った瞬間に、がゴクンとのどを鳴らし、おもいきりむせた。
けほけほと咳き込みながら、涙を浮かべて苦しそうだ。



「ごめん、そんなに驚くと思わなかった」


憲兵が、少しあわてて言う。

今までの様子を見ていれば、同じように思う人間は多々いるに違いない。
なのに、いままでその質問をした奴はいなかったのだろうか?
ブレダが思わずフェリー曹長を見ると、の答えを待ち構えて目を瞠っている。



落ち着いたが、ゆっくりと言う。


「・・・だって・・・相手にされてないの、分かってるし・・・」



フェリーと憲兵の頭に、ガンと殴られたようなショックが走った・・・ようにブレダには見えた。
でも、は彼の衝撃に気付く様子はない。




「ごめんなさい・・・・今の、ハボック少尉には内緒にしてくださいね」



うすうす予想はしていたけれど、これで確実になってしまった。
涙目の上目遣いで、八の字の眉のは、計算じゃなくても十分に可愛い。



意中の彼女に潤んだ瞳で見つめられて、ますます悔しくなる。
惚れた相手にそんな仕草をされると、本気で欲しくなる。
なんで、俺じゃないんだろう・・・。


そう考えている彼らの気持ちが、ブレダには痛いほどわかった。




「ハボックのどこが好き?」

ショックを受けている憲兵のかわりに、ブレダが聞いた。
は小さくなってブレダを見る。



「どこって・・・・良く、分からないですけど・・・」


恋は盲目と言うから、しょうがないかもしれない。
そう思って、ブレダも質問を変えてみる。



「ハボックに告白したりしないの?」


の八の字眉が、ますますしょげた形をつくる。
そういえば、相手にされないって決め付けていたと思い出す。




「ハボック少尉は・・・今までの恋愛を全部は知らないけど・・・
 きっと私の知らない女の人もいるんだと思います」

静かに、小さな声で話す



「そりゃ、奴も男だからな。男とは付き合わないけど・・・
 そんなに何人も手玉に取れるような奴じゃないぜ?」

ハボックは、どちらかといえば惚れっぽいかも知れないが、真面目な恋愛をする。



「分かります。きっと一人を大事にする恋愛をしてきたんだろうなって・・・
 彼が今まで好きになった誰にも、今の私は勝てる気がしないんです」

寂しそうに微笑むは、それだけで綺麗だった。



「自信持っていいと思うけど?」
「・・・コドモは恋愛対象に入らない人だから」



くすくす笑うのに、相変わらず八の字眉は変わらない。
無理をして場を沈めないようにしているのか。
ブレダもそれ以上何も言えず、一瞬沈黙が訪れたようにも思えた。





「―――――――俺にしない?」


空気を揺るがす声がした。
沈黙を破ったのは、憲兵の口から出た言葉。
驚いた顔の。平静を装うブレダも、内心は驚いていた。
フェリーに至っては、硬直して動けなくなっている。



「コドモが成長するには経験が一番だって。俺で練習すればいいよ」


なんで憲兵からそんな言葉が出たのか分からない。
気がついたら、口から出ていたのかもしれない。




「考えといて」




(こいつ、けっこうやるなあ・・・)
精一杯の勇気が言わせたんだろうと思う言葉を、ブレダは黙って見過ごすことにした。
ハボックのへの気持ちがわからない以上、口を挟む理由はない。





「・・・・・あ、あの」
「はー、お待たせ。おっと、あんまり進んでないんじゃねえの?何か頼むか?」


彼女が何かを言う前に、ハボックが帰ってきた。



「遅いよ、お前」



ブレダがハボックに声をかける。
そうか?とハボックは首を傾げる。



苦い気持ちを抱えながら、ブレダは心で毒を吐く。


実際、遅かったんだよ。ハボック。
もう、これで彼女の頭には、お前だけじゃなくなったはず。