やたらに長いメニューの料理やデザートを、店のゆったりした雰囲気の中で食べる。
食事に2時間以上の時間をかけるなんて贅沢な時間の使い方だ、とロイは思う。



慣れているようなは、さすが将軍の娘というか、育ちがいいのだろう。
それとも・・・・・・・・今までのイメージと違って、実は結構遊んでいるのだろうか?



今日一日のを見て、その計算を計算とも思わせない仕草にロイは戸惑っていた。



ふと見上げてくると思えば、目が合うと頬を染めて視線を逸らしたり。
すごく喜んだかと思えば、恥らうようにはにかんだり。
他の男の影をロイが疑うと、それを否定しないでおくくせに、その後あっさり否定する。



それも、あんまりすんなりやってくれるから、どれが嘘で本当か釈然としない。
呼び方も、最初から親しく名前で呼ばれている。



清純な振りをしたお嬢様というのは、案外多い。
それを知っているだけに、ロイは複雑な気持ちになった。

(このお姫様がそうなら・・・私に見る眼がない、ということか)




「ロイ様?」
「・・・・名前で呼ばれると、親密になったような気持ちになりますね」
「・・・・・お気に障りました?以前はそのように呼ばせていただいてましたから、つい・・・」



無言で目を丸くするロイを、が少し不安そうに覗き込んだ。



「そう・・・だったでしょうか?」
「お忘れですか?最近は社交界でお会いしても挨拶だけでお話する機会もなくて・・・
 ロイ様は、あまり長居をされませんでしょう?以前と違って」



確かに以前のロイは、社交界に顔と名前を売っておかないと、と意気込んでいた。
どこでどんなつながりができるか分からない。上に行くために、人の縁は大事だ。


でも、それも立場が落ち着いてきた今となっては、挨拶程度で十分目的が果たせる。
仕事が忙しい身だから、目的を果たせばそれでとっとと退散するのが常だった。




「あの・・・マスタング様?」
「いえ。どうか名前でお呼びください、以前のように」
「思い出していただけましたの?」
「ええ。そうなると、私はあなたをなんとお呼びすれば?」




ロイは思い出した。将軍と近付くときに娘を利用して・・・・に近付いた。
名前で呼ばせたのはロイのほうから。彼女は素直に従っただけだ。


ロイはを、将軍のお姫様、と呼んでいた。名前ではなく、愛称のように。
でも、それは何年も前の話。



「私のことも、名前でどうか。呼び捨てていただいて構いませんわ」
、と?将軍に叱られそうですね」
「お父様は、承知してらっしゃるふうでしたわ」
「え?」



(お見合いと思って行って来い、って言ったもの。きっとご承知くださるはず)
はそう思ってにっこりロイに笑ってみせる。


(これは、ようするに・・・いや、まて。落ち着け)
混乱するロイは、自分の『見る眼』に懐疑的になってきた。




「お父上からどうお聞きしたんですか?まさか、ゲームのことを?」
「ゲーム?・・・・何の話ですの?」



きょとんとしたを見て、ロイは納得する。
将軍は、さすがにゲームの賞品になったなどと打ち明けるような御仁ではない。



「実はお父上と賭けをしてね。私が勝ったら貴女を、と・・・」



ロイは、にっこり笑ってを観察する。
どういう反応を示すだろうか?



「それは・・・・私が、ロイ様のものになるということですか」
「いやですか?」
「いえ、いやではありません・・・・」



(ええと。でも、それってどういうことなのかしら?)
答えておきながらは意味を図りかねた。


(受けて立つとは思わなかった・・・・やはり、思ったより素行の悪いお姫様なのか)
ロイは答えに落胆した。だが、外見には出さない。



『誰かのものになる』 
その言葉の意味を、捉え方が違うという可能性に至っていない。



(・・・それは、ロイ様の妻になる、ということ?)

なら、幼い頃から憧れていたこの人に嫁ぐのは、嫌じゃない。
それより見知らぬ誰かをいきなり連れてこられるほうが、拒めない立場なだけ嫌だ。



「・・・・・・では、ゲームの賞品として、私のいいなりになるということですね」
「え?」



ロイの言葉にが耳を疑う。


(奥さんにしたいってことではなかったの・・・・)

落胆したものの、それならそれで父親の負債を請け負う身なら果たすしかない。
観劇も宝石店も料理も、は立派にもてなされてるのだから悪い待遇ではない。
誰かとデートしたくて、誰でも良くて自分が指名されたんだとしても。

ロイに向かって頷きながら、は自分を慰めた。




「このホテルに部屋を取ってきます。デザートはそこで頂きましょう」
「・・・・・はい、ロイ様がそうしたいなら・・・」



(わざわざどうして?ホテルの部屋に何かあるのかしら)
コドモで経験のないは、普通ならありえないくらい発想が乏しい。
そしては温室育ちで男女の営みも知らない、ということをロイは知らない。



(受け入れてくるなんて・・・・やはり、そうなのか)
だんだん落胆がいらだちに変わってくる。ロイは唇を噛んだ。



そんなときにデザートが運ばれて、がうっかり言ってしまう。



「あの・・・・来てしまったのですから、こちらで頂いてしまいましょう」
「お部屋に行く約束ですよ。あなたは私の獲得した賞品なんですから。
・・・・・・・・私の言うなりになるのでしょう?」
「なりますけど・・・・食べ終わってからお部屋に行っても同じでしょう?」



今度こそピキ、と空気が凍った。



は心臓がはねた。



ロイの勘違いが彼の中で肯定に至ったことを知らず
この後待ち受ける運命も知らないまま――――――――――――











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