煙草の煙が天井を白く霞ませる。
白い色を濃くするかのように、ふうっと煙を吐いた。
イライラと不機嫌な自分をもてあまして、ハボックは天井を見上げる。
―――まったく19歳にもなって、コドモすぎるんだアイツは!
「ずいぶん不機嫌じゃないか?」
声をかけられて視線を移すと、見慣れた同僚がそこにいた。
コーヒー片手にブレダ少尉がハボックの正面に座る。
「別に?」
何気なく答えたつもりだが、長い付き合いの同僚は見抜いている。
でも、理由まではたぶん分らないだろう。
ハボックは不機嫌の原因を思い出す。
自分の妹分で、幼馴染で、同僚の、・のことを。
「あのね、最近知り合った人に誘われて」
相談というよりは報告で
一見思慮深く見える態度が、そもそもの間違いだとハボックは思っている。
コイツは、見た目以上に物事を分ってない!
恋愛のなんたるかなんか絶対分ってない!
とは思いつつ
本当にわかってないのか訝しくなって
「それって、デートじゃねえの?」
問いかけてみれば、予想通り。
あわてたようにかぶりをふる。
「そんなんじゃないよ!良いお店があるけど、男一人じゃ行きにくいからって」
だからそれは誘ってるだろう明らかに!!
だが、彼女はそんなことはお構いなし。
「ちゃんと正装していくレストランなんだって」
「・・・それで?何で俺に言うの?」
「そういう所はきっと高いし、断ったんだけど・・・」
「おごるって、言われたんだろ?」
「なんで分ったの?すごい。」
本当に目を丸くして驚く姿を見ると、あきれてしまう。
相手は、きっと駆け引きでもされてる気分なんだろうと本気で想像つくからだ。
「よかったなー」
全然良かったと思ってない口調で言ったのに
「よかったのかなぁ。じゃ、まあいっか」
何の感情もなく、あっさり言う。
・・・何だ、その疑問ぽい言い方は。
ひっかかったから確認することにした。
「俺に話したのは、確認のため?」
「うん。そういう誘いって受けたことないから」
「・・・行っても大丈夫かと考えたわけ?」
だとしたら、恋愛思考回路が発達しはじめたということか。
「だって、いくら誘われたからって奢りは。高いみたいだし」
・・・そっちかよ。
「やっぱり、奢りはなしにしてもらお」
「でも行くんだ?」
「うん。ここまできたら、断るのも悪いかなって」
ハボックは、会計でかたくなに奢られることを拒むの姿を想像した。
たぶん相手は、彼女が楽しくなかったから、と考えるに違いない。
ご愁傷様なことだ。
だが、にその気がなくても、その後相手がどうでるか。
ハボックは頭が痛くなった。
・・・・けして本人は気付かないだろうと予想がつくが、
なんだかバカらしい。
いろいろ考えると面倒になるし
この現実に呆れ返って、脱力状態になる。
このお姫様は、鈍すぎて本当にやっかいだ。
―――それでも、どうするかなんて決まってる。
デートの結末まで筋書きが読めてしまう自分がいる。
だったら、怒って不機嫌になってみたところで
仕方がないとあきらめるしかないじゃないか。
ハボックはもう一度天井に向かって煙を吐き出した。
一通り気持ちの整理がついたところで、タバコを消す。
そして当たり前のように、ブレダの飲んでいるカップを奪ってコーヒーを飲み干した。
「おい・・・」
「ごちそーさん」
二カッと笑顔でカップを返す。
ブレダはいつもの無表情で黙ってそれを受け取った。
