side heroine・・・1
人にはいろんなコンプレックスというものが存在すると思う。
私のコンプレックスは何だろう?
それを言葉にできなくても、いつも何か分からない不安が胸を支配してる。
「んっ・・・はぅ・・・」
大佐の腕に抱かれながら、手のひらを噛みしめる。
喘ぎ声が洩れないように。荒い吐息を我慢するように。
大佐の大きな手のひらが、私の肌に吸い付くように触れる。
汗ばんだ身体は体温すら溶け合ってしまいそうに密着していて、熱い。
大佐の舌が私の腹部をなぞり、息遣いが肌をさわる。
それに感じてしまって私は背中を弓なりにそらす。
両足を開かれて恥ずかしくても、私は何も抵抗しない。
なるべく声を押し殺して、息をこらえて、濡れた場所を提供する。
固く締まった大佐の一部が私の中に入って、最初はその痛みに身体が震えた。
それは最初だけで、すぐに愉悦の波が私を襲う。
こうなったらもう、いくら自分の手のひらを噛みしめてもどうしようもない。
「はあっ・・・はぁん・・・あぁん」
いくらでも洩れて出る自分の声に、恥ずかしさをこらえながら、私は大佐を感じ続ける。
何度も突き上げられて、身体の感覚が昇天してしまうくらい抱きしめられて
やがて力尽きたように解放される。彼の身体が覆いかぶさる。
荒い呼吸の余韻の中で、彼の姿を見つめる。
「・・・・・・んっ」
キスで唇を塞がれて、そのまま腕に抱きしめられた。
これで今日のデートは終わる。次はいつ二人きりで会えるんだろう?
職場恋愛は周囲の人には秘密がルール。
だから、私がマスタング大佐と付き合っていることは誰も知らない。
我ながら、うまく隠していると思う。
でもそれはウラを返せば、職場では上司と部下以上の関係はありえないということ。
しかも直属の上司は彼じゃない。全然違う部署の少佐が、私の上司。
大佐はもてるから、もしかしたら浮気されてるかもしれないし
ひょっとして私が、むしろ浮気相手じゃないかと思うこともある。
でも考えても仕方ないから、私は何にもしらないふりをする。
たとえ彼が私の知らない誰かとデートしてたとしても。
どんな状況でも・・・仕事が忙しいという言葉を信じて。
「少尉。この書類って、こっちの部署の担当じゃないか?」
「ハボック少尉・・・わざわざどうも」
東方司令部のオフィスの一角。
別の部署のハボック少尉が、私のオフィスに来るのは珍しい。
金髪の長身を見上げる。
階級は一緒でも、彼は士官学校の先輩に当たる。
一学年上で、学生時代はよくかまってくれた。
実は、付き合っていたこともある。長続きはしなかったけど・・・・。
そして今は大事な友達、そして頼れる先輩。
それに、ハボック少尉はマスタング大佐の直属の部下・・・いいなあ。
「じゃあ確かに渡したから」
「はい、確かに受け取りました」
書類を受け取って顔を見合わせる。
目が合って、思わずお互いにこりと笑う。
「・・・・なあ。久しぶりに飲みにいかないか?今日はあいてる?」
「いいですね。いつものとこですか?」
「ん・・・あそこは同僚がたくさん来るし。雰囲気のいいトコ見つけたんだけど」
「新しい店の開拓ですね。楽しみ」
こうやって彼氏がいてもいないふりして、同僚と飲みにいったり。
不特定多数のつきあいは、秘密の恋愛を維持するのに大事だと思う。
ハボック少尉と別れて自分のデスクに戻ると、隣のデスクの同僚が話しかけてきた。
「ねえ、今のハボック少尉でしょ?仲いいの?」
「仲いいっていうか・・・士官学校時代の先輩で、昔から知ってるから」
「付き合ってるの?いい雰囲気だったぁ」
「嘘!?やめて、違うから!」
「あやしいー」
「あやしくないってば!」
同僚がしつこくて、ついに元カレという事実を言わされてしまった。
そうでもしないと、そのまま公認にでもされてしまいそうで・・・。
「へえ、そうなんだ。でも今日一緒に飲みに行くんでしょ?」
「うん。一緒に来る?」
「いいわ、遠慮するよぉ。大事な話があるかもしれないでしょ?元さやとか・・・」
「ないない。ハボック少尉に興味あるなら紹介してあげるわよ」
「・・・・・・・にその気が全然ないのは分かった」
同僚を納得させて、仕事に向かった。
今日は早めに仕事を終わらせて、少尉と一緒に飲みに行く。
大佐の了解を得ておきたいけど、そんな時間とタイミングあるかしら?
結局仕事に集中しているうちにハボック少尉との約束の時間になってしまって
大佐にはなにも言えないまま。後で報告しようと決めた。
帰り支度をして、待ち合わせの玄関口に向かう途中、
誰もいないはずの資料室から腕が伸びてきて、あっと言う間に連れ込まれた。
「・・・・大佐!?」
身体を棚に押し付ける腕の正体に驚いて、小声で叱責する。
こんな所で、誰かに見られたら・・・・
「大丈夫、誰も見てない。あと、二人きりのときは名前で呼びなさい」
「・・・・誰にもって・・・、あとここは職場ですから、敬語敬称は使います」
大佐は少しいらいらしたように、話をそらした。
「それは、今はいい。今日私の家に来ないか?」
「お誘い嬉しいですけど・・・今日は用事があって」
昨日会ったばかりで、今日もなんて珍しい。
もっと早く言ってくれたら優先させられたのに・・・・
「ハボック少尉と飲みにいくそうじゃないか」
「はあ・・・・行きます。大佐も一緒に行かれますか?」
私のその様子に、少し脱力したような大佐の姿。
「彼とはどういう関係なんだ?」
・・・・・それは、もしかしてやきもち?まさか大佐が私に??
「なんだ、その顔は・・・。嬉しそうだな」
「はっ・・・・いいえ、すみません!」
といいつつ、ついふにゃっと笑ってしまう私を、大佐は眉を寄せて睨む。
「そんなに嬉しいか?ハボックと飲みに行くのが」
「違います!大佐が・・・・いえ」
「私が?」
「いいえ!!何でも!!!それより大佐、ご一緒しますか?」
あわてて話をごまかす。
大佐と私は階級が違いすぎて、どうしても一緒にいて緊張する。
大好きだから。・・・・幻滅されたり嫌われたりするのが怖い。
うっかり『やきもちやいてくれたんですか』なんて言って、違ってたら・・・
ご機嫌を損ねられてしまうかもしれない。
そうでなくても、私はたまに大佐をしかめ面にさせている。
原因は、いつも良くわからない・・・普段はとても優しい人なのに。
「私は仕事があって、今日は帰りも遅くなりそうなんだ」
「そうなんですか・・・」
「だから、飲みに行った帰りで構わないから、今日は私の家に寄ってくれ。待ってるから」
「はい!分かりました」
待ってるから、なんていわれて舞い上がれる私は安い女だ。
それでもうきうきとハボック少尉の待つ玄関口へ向かう。
ハボック少尉は先に来て待っていた。
「。なんか嬉しそうだな・・・そんなに楽しみだったのか?」
「ふふ。期待してるから、いいとこ連れてってくださいね、先輩」
にこにこと笑いかける私に、ハボック少尉は嬉しそうだ。
以前は少尉のことを先輩と呼んでいた。
「最近忙しそうだったな」
「ん・・・・。徹夜が続いて、ちょっと辛かったです」
そして昨日は徹夜免れた久々の夜で大佐に呼ばれてしまったし・・・
我ながらかなりハードスケジュールかも。
「今日は大丈夫なのか?」
「大丈夫です!ひと段落ついたので、ほっとしたとこです」
「なんか最近疲れてふらふらしてたから、本当は今日誘うのどうかと思ったんだけど・・・」
そいう言われて驚いてハボック少尉を見た。
部署は離れてて、一緒に会うことは少ないのに、いつそんなとこ見られたんだろう?
「けっこう良く見てるだろ?」
ハボック少尉が、にっと笑った。



しょっぱな、ええ!?と思った方・・・
大人な話が作りたいと思って、こんな展開です。
成人以上の注意書きにものすごく期待した方は、すみません。
今後の展開も絶好調な妄想モードで突っ走ります。
