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side heroine・・・2
確かに、私は疲れてた。
だから簡単に酔ってしまったのかもしれない。いつもならどうでもない量なのに・・・・
「おーい、。大丈夫か?」
「だいじょうぶ・・・です・・・」
身体が重くてずっしりと意識が沈む。
それを何とかつなぎとめようと、自らを激するのに、すべてまるで夢の中のよう。
「まだ一杯しか飲んでないのに・・・お前、普段こんなの平気じゃんか。
やっぱり疲れてたんだよ。今日誘って悪かったな」
「いえ・・・ぜんぜん。・・・ごめんなさい」
「今日、もう帰るか?」
ハボック少尉に申し訳ないと思ったけど、これ以上は確実に迷惑になる。
私は頷いた。ハボック少尉が店の人にもらってくれたおしぼりを、額に当てる。
だんだん意識が遠のく。・・・・だめ。大佐が待ってる・・・
「おい、!?」
ハボック少尉の声が遠くに聞こえた。
「ん・・・・」
柔らかい場所が身体全体を受け入れてくれて、その心地いい感覚に遠い意識が戻される。
ここは、どこだろう・・・・?
「気がついたか?、水飲むか?」
うっすらと目を開けると、傍らにいるのはハボック少尉。
どこか、柔らかい場所に横たえてもらったようだ。
「ここは、俺のアパート。今寝てるのは俺のベット。あれしきでつぶれたこと、ないだろ?
びっくりしたよ。呼んでも起きないし、仕方ないから連れてきた」
「私・・・・帰らなきゃ」
「すぐに動くのは無理だよ。相当参ってるんだから。今日は泊まっていけば?」
「何言ってるんですか!できるわけ・・・」
思わず抗議した私に、ハボック少尉がひんやりしたタオルを頭に乗せてくれる。
たぶん兄のような気持ちで言ってくれているんだと思うけど・・・・泊まりは無理。
一緒に一夜過ごして何もなかったとしても、大佐に誤解されるようなことはしたくない。
私は気合を入れて、よいしょ、と起き上がる。
胃の中がふわりと持ち上がるような気持ち悪さを感じて、ふらついた。
「だから、まだ無理だって。顔色も悪いし、動かないほうがいい」
「でも・・・ダメ。帰らなきゃ・・・」
まだぼんやりする頭を抱えて言う。
ハボック少尉が思案するように、私を見つめていた。
やがて覚悟を決めたように口を開く。
「俺・・・今日、に言おうと思ってたことがあったんだ」
「え・・・・?」
「俺たち、士官学校のとき付き合ったけど、結局すぐ別れただろ?」
「はい・・・」
ぼんやりと答える。
何で別れたのか・・・キライになったわけじゃない。
でも、ハボック少尉は当時最高学年で忙しくて、私はあまり構ってもらえなくて。
コドモだったから、そんな簡単な理由で、距離ができたのと同時に離れていった。
どちらから別れましょうとか、そんな話はないまま、自然消滅。
再会したときハボック少尉の中で私は、とっくに『別れた彼女』になっていた。
私は少尉の新しい恋人を見て、そこで初めて悟ったのだ。
彼にとって自分が、いつのまにか昔の女になってたことを。
でも当時はコドモの恋愛だったから、『そうなんだ』と納得して、傷つきもしなかった。
手をつないでキスしてときめくような、淡い恋。
大佐を想うように深くえぐるような気持ちは、あの頃は何も知らなかった・・・・。
「・・・・俺、勝手に自然消滅したこと、本当はずっと後悔してて・・・」
「それは・・・お互いコドモだったですし・・・」
「・・・・が好きなんだ」
「私も先輩のこと好きですよ。だから今のままでも・・・」
いいじゃないですか、という言葉をさえぎって、ハボック少尉が抱きしめてきた。
「本当に?も俺が好き?」
「ちょ、ち、違います、って、えええ・・・?」
ぼうっとしていた頭が、急激に醒めてきたような気がした。
でもそれは衝撃がそれだけ強かったというだけで、依然身体は思うように動かせないまま。
鍛えられた上腕が私の身体をすっぽりと包み込む。
大きな身体。学生のときとは、違う。それだけの時間が流れたという証拠。
「俺、ともう一度やり直したいって、今日言うつもりでいたんだ」
「だ、だめ。それは・・私は、そんなつもりじゃ・・・」
酔って呂律が回らないなりに、一生懸命言った。
でもハボック少尉は離してくれない。
押し倒されて、唇に口付けられた。
濃厚にむさぼられて、舌が口腔に入ってくる。苦しくて涙が出た。
抵抗してるのに力が入らない・・・悔しい、お酒なんか飲むんじゃなかった。
ハボック少尉の唇が、首筋に吸い付く。
私の弱い悲鳴が口から洩れる。少尉は離してくれない。
私を押さえつける両手が、服をわし掴む。乳房を握られて痛みが走る。
頭がぐらぐら回りながら抵抗しても、あんなに鍛えた筋肉の前では無意味だ。
乱暴に腰に手を伸ばされて、下着に入れられる。臀部に手のひらが触れて、鳥肌が立った。
「やぁ・・・!やめて・・・お願い、先輩」
手のひらが臀部をなぞり、太ももに触れる。下着が下がる。
服の上から乳首を探られて、指でくりくりといじられる。
ハボック少尉の荒い息。少しお酒臭い・・・酔ってるの?
抵抗して身じろぐけれど、逆に彼の感情を燃えさせてしまうようで
ますます興奮していく少尉を止められない。
頭が回る・・・・気持ち悪い・・・
ついにブラウスをはだけられて、生肌をさらされる。
突起した乳首をじかに触られて、たまらなくなって嗚咽がもれた。涙が止まらない。
「・・・泣いてる?」
しゃくりあげながら、恥ずかしくて顔を隠す。
気付いて・・・お願いだから、これ以上はやめて・・・
言葉にできないまま、震えて泣いた。
頭はがんがんと鳴り響き、霞がかかったように気持ちが悪い。
「・・・・もしかして、怖いのか?・・・初めて?」
違う!誰が生娘よ!?
でも乱れた息と気持ち悪さのせいで、言葉にできない。
かろうじて首を振る。
それをどうとったのか、ハボック少尉がまた覆いかぶさってきた。
誤解された・・・?
体中が緊急警報を鳴らしたみたいだった。
誤解されて、行為を同意したと思われてたら、今度こそ少尉は容赦なく私を抱く。
それを裏付けるみたいに少尉は私を脱がせ始める。
乱れて、脱がされかけていた衣服は簡単に肌をさらした。
「やっ・・・・いや、なの・・・お願いやめて・・・・・は、あぁんっ」
乳首を舌で転がされて、悲鳴は喘ぎに変わってしまう。
鳥肌がたっているのに、こんな声を出したら、また・・・
ぼやけた頭とふらつく身体で、それでも強引に身体を横に丸めた。
ハボック少尉の身体の下で。それでも背中に手が伸びて容赦なく愛撫され、
とうとう口から出てしまった・・・言ってはいけない人の名前。
「いや、いやぁ・・・・・っん・・・・・・・・・・・・助けて、ロイ」
ハボック少尉の動きが、止まった。
静寂のなか私のしゃくりあげる泣き声だけが、やけに響いた。
「・・・・・・誰、って・・・え?」
泣き声で話せない私に、呆然としたように少尉がつぶやく。
「、もしかして大佐と・・・・?」
ごめんなさい。こんなふうにばれて、大佐に何か不都合があったらどうしよう。
不安で、回らない思考回路。涙でよけいにぼやけてしまっているよう。
「片思い?それとも・・・」
頷くことも首を振ることもできなかった。
でも・・・大佐と敬称で呼べば言いつくろうこともできたけど、私は名前を呼んでしまった。
どうしよう、大佐の迷惑になったら・・・
「お願い、ハボック少尉。誰にも言わないで・・・大佐の迷惑になる」
そう言って少尉を見ると、打ちのめされたような姿が目に入る。
どうしよう・・・私、言葉を間違えたんだろうか。でも言い訳するほど深みにはまりそうで・・・
「・・・が俺に抱かれるなら、考えてもいいよ」
少尉の言葉にすくみあがる。
身体を固くして、回らない頭で思考回路をまとめようとする。
抱かれるのは嫌。でも・・・・
ふっと、ハボック少尉の自嘲の笑み。
「嘘・・・・ごめん。言わないよ。は大佐が好きなんだな」
今度こそしっかりと、頷いた。
涙はまだおさまらない。
「俺は何も知らないで、いい気になってたってことか・・・・なんだかなあ」
「ごめんなさい・・・・ハボック少尉」
「謝らなくていいよ。俺もこんなに泣かせて、悪かったな。酔いが一気に醒めた」
おちついた少尉の優しい声に、ますます涙が溢れてしまった。
もしかして私って泣き上戸?止まらない。困らせたらどうしよう・・・
「しかし、よりによって大佐とはね・・・」
「・・・・・・」
「苦労、するぞ」
「・・・・・・・いいんです。好き、だから・・・・」
「ちゃんと付き合ってるんだろ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・多分・・・・・」
ハボック少尉が目を丸くした。
私の答えが意外だったに違いなかった。
「なんだそれ、多分て・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「俺は、自分の惚れた女が安く扱われるのは嫌だからな。そこんとこはっきりさせろよ」
「・・・・・・・・・・・」
「!!ちゃんと言え!」
「・・・・・・だって」
仕方なく話す。本当は不安なんかたくさんある。
どうして私を選んでくれたの?それとも、誰でもいいの?
大佐の周りにいる女の人たちは、会ったことないけど名前が多すぎる。
「・・・・大佐は何にも言わないけど・・・・」
「うん」
「ジョセフィーヌさんとか、エリザベスさんとか・・・他にもたくさん、名前聞くもの」
「・・・・・・・えっと・・・・それは、もしかして仕事とかじゃないかな」
ハボック少尉が口ごもる。
言いたいことを我慢してるみたいな・・・・
「うん。大佐もそう言うから、信じる。そういうことにしようって、思うけど・・・」
涙が溢れる。よりによってこんな状況で・・・ハボック少尉に何もかも打ち明けるなんて。
まるでいろんなタガがいっぺんにはずれてしまったみたいに、涙がぽろぽろと流れた。
「・・・・・不安、なのか?」
「・・・・だって、私のどこがいいのか、全然分からないもの」
「そうか・・・」
最初は、そんなに乗り気な交際じゃなかった。
上官の命令と同じ、逆らえない関係だから従っただけ。
軍隊は上の人間の言うことが絶対だから。
仕方ないから、大佐が飽きるまで相手をしよう。そんな流された関係だった。
でも今は違う。いつか飽きたといわれて捨てられても、私はきっと大佐がすき。
「・・・・今日、泊まってっていいから」
「な、何を!」
「ここ唯一鍵かかる部屋だから。内側から閉めちまえ。俺は向こうの部屋のソファで寝る」
「ダメです。帰りますから」
「ぼろぼろじゃないか。今までよく我慢してたな・・・・そんな状態じゃ帰せない。
心配しなくても、もう何もしないから。俺にこれ以上恥かかすなよ」
ぽんぽんと頭をたたいて、ハボック少尉が部屋から出て行く。
静かに扉が閉じて、向こうの部屋も静かになった。
少しだけソファのきしむ音がする。
乱れた服を見た。鏡に映るのは、泣きはらした腫れぼったい瞳の自分。
なんてぶさいく。
首筋に、ハボック少尉のキスマークがついていた。
熱く濃厚なキス・・・・これは、制服を着てれば隠せるかもしれないけど、私服は・・・
タートルネックでも、もしかしたら見えてしまうかも。
こんな姿では、大佐の家には行けない。
次に会ったときの今日の言い訳を考えると、不安で胸がざわついた。
明日が非番でよかった・・・・・
とりあえず今は、ゆっくり寝て明日考えよう。
ぼうっとする頭を休ませて、私はハボック少尉の匂いのするベットに身体をうずめた。
