side heroine・・・9
ロイと暮らし始めてから、平穏な日々が続き、体調も少しずつ快方に向かった。
相変わらず食べると胃がもたれたりするけど、ロイの手前食べないわけにはいかない。
三度の食事に気を配れるようになって、それがいいのかもしれない。
「18区のこぜりあいは潰してきたから、後処理お願いしますね。ハボック少尉」
「あそこの?もう潰したのか?早いな・・・中尉と一緒に?」
「ええ。市街地が少し混乱してるけど、最小限の被害にとどめられたから楽なはずです」
「それはありがたい。・・・ここ、少し怪我してる。やりあったのか」
私の手のひらのかすり傷を、ハボック少尉が目ざとく見つける。
「そう。ちょっとやりあっちゃって・・・倒すのは簡単だけど、とどめに至らなかったの」
倒しても浅いダメージしか与えられなくて、敵がすぐ復活してしまう。
それは昔からの私の弱点で、ハボック少尉にもよく指摘されていた。
「は昔からツメが甘いからな。腕力ないってわかってんだから、鍛えろよ」
「鍛えてます。・・・・なかなか思うように付かないの」
中尉が銃を手にオフィスに戻ってきた。
私のほうをみて、にっこり笑う。
「お疲れ様。大活躍だったわね、おかげで早く仕事が済んだわ」
「お疲れ様です。中尉こそ、さすがだと思いました」
にっこり笑う私達を見て、ハボック少尉が不思議そうな顔をする。
「なんか、意気投合してません・・・?」
「ええ。少尉が、あんなに動けるなんて知らなかったわ」
「徒手格闘術は学生のとき上位に必ず入ってましたからね。ただ、こいつ・・・
すばしこくて頭を使って相手を倒すけど、腕力なくて決定打に至らないんですよ。
だからこうして現場で怪我をする。気をつけてやってくださいね、中尉」
「ちょっと、ハボック少尉!?何をお願いしてるんですか!」
思わずハボック少尉とホークアイ中尉の会話に入ってしまった。
もう!そんなふうに暴露しなくても・・・。
「仕方ないわ。はウエイトがないんだもの。最近も胃を壊してて、太れないのよ。
それに今日はたまたま徒手格闘術まで至ってしまったけど、普段は銃を使うし・・・
彼女は銃の名手なのよ。ハボック少尉、知らなかった?」
中尉が私をかばって、にこりと笑ってハボック少尉に切り返す。
なんだかおねえさんとおにいさんに面倒を見られてるような気分・・・
オフィスの残務整理で書類を片付ける。
相変わらず現場で指揮をとる中尉と、現場が主な仕事場のハボック少尉。
他の士官もみんな、それぞれの仕事で出払ってしまってる。
現場が多いと司令部のオフィスはがらんとしている。
今は後方支援のフェリー曹長と、配属間もない私しかいない。
「少尉、これってどうするんでしたっけ」
「判事記録を洗って過去のデータと比較するの。これ使っていいわよ」
フェリー曹長に自分用のファイルを貸す。
それをめくったフェリー曹長は、驚いたように目を見開いた。
「これ!!すごいじゃないですか。この資料、自分でまとめたんですか?」
「けっこう役に立つのよ。過去の記録やデータの比較が一目瞭然でしょ?」
「盗まれたら大変ですね」
「盗まれても大丈夫。すでに新聞で報道されたりしてる記録ばっかりだから」
「え・・・そうなんですか」
私の言葉にフェリー曹長が意外そうに資料をみつめた。
「機密を持ち歩くわけにいかないもの。それでも、けっこう使えるのよ」
「すごい。やっぱり、少尉はすごいです・・・・今、付き合ってる人とかいるんですか?」
言葉の端に、唐突に何か引っかかることを聞かれた。
仕事の話とは違うプライベートな質問。
「今はいないけど・・・・どうして?」
「それなら、僕なんてどうですか?」
「いきなりどうしたの?冗談はいいから、資料貸してあげるから頑張って」
「冗談じゃないです!!本気で僕はっ・・・」
身を乗り出したフェリー曹長が、自分の声に驚いたように顔を赤くした。
真剣な眼差しを向けられて、私は驚いて言葉が出なくなった。
「・・・いや、ですか。やっぱり僕なんかじゃ、つりあわないですよね」
「そんなことないわ。フェリー曹長の良さはわかってるつもりよ・・・でもそうじゃないの」
「僕のこと、認めてくれるんですか」
「認めてるわ。でも私、好きな人がいるのよ」
「構いません」
即答されて言葉に詰まる。
好きな人がいても構わないと言うのは、どういうこと?
「好きな人がいても、構いません。チャンスをくれるなら僕は頑張りますから」
「頑張るって・・・」
「少尉に好きになってもらえるように。駄目ですか?付き合ってる人、いないんですよね」
「それは・・・そう言ったけど。ええと、そうだ私!実は妊娠してるって言ったら?」
「僕が面倒みます」
あからさまに断る口実で冗談を言ったら、また即答。
絶対驚いて引く、と思われる嘘をついたのに。
驚いた彼に嘘を明かして、ほらみなさい、と言ってからかって、
この場を受け流してしまうつもりだったのに。
でも、彼の率直さはまぶしいくらいうらやましかった。
そんなふうに突っ走るタイプには見えなかったのに。
「そんなこと、簡単に考えていいいことじゃないわ。落ち着いて?」
私の表情をみて、途端にしゅんとうなだれるフェリー曹長。
「やっぱり・・・・嫌ですか?」
「嫌じゃないけど」
うっかり、という表現がぴったりなほど口を滑らせた。
フェリー曹長が歓喜の表情で私に詰め寄る。
「本当ですか!?僕でも、いいですか!?」
「え?」
「嫌じゃないんですね?良かった!だめもとで言ってみて良かったあ」
満面の笑みとうれし涙のにじむ彼に、あっけにとられて否定するタイミングをなくした。
呆然としてる場合じゃないのに、とっさに行動が起こせない。
テロの大男相手の立ち回りとはわけが違う。
どうして私はこんなに不器用なんだろう?
「あ!あの、もちろん、最初はお友達みたいな関係からで構わないですから!」
「え・・・・ええ」
答えてどうするの!!と自分を叱咤してもたものの、浮かれてる曹長に何も言えず。
自分のふがいなさにため息をついた。
