side roy・・・1
(side heroine・・・1at the same time)
いつも恋人としては出来すぎている彼女に戸惑うことが多かった。
今までの女のように嫉妬もしなければ何の要求もしてこない。
会えない日が続いても文句も言わず、それどころか仕事が忙しいことをねぎらってくれる。
ベットを共にしても、私のしたいようにさせて何も拒まないかわりに、要求もしない。
淡白なのかと思えば愛撫に感じやすく、恥じらいすら見せる。
ぎりぎりまで声を出すのを我慢する彼女が可愛くて、余計に責めてしまう。
でも関係を周囲に内緒にしているから、デートといえば家か宿でやることもそればかり。
職場恋愛で、秘密の関係を保てないような相手を選んだりはしないが・・・これでは。
いっそ結婚してしまおうか?それとも、そこまでのぼせているのは自分だけだろうか。
「あぁん・・・はぅ・・・んっ・・・・」
感じている彼女の声。か弱い鳴き声が、吐息まじりに洩れ出る。
彼女を抱きしめる。上下に揺さぶって、何度も突き上げる。
手のひらに余る乳房の豊かさと対照的な細い体幹ラインにぞくぞくする。柔らかい肌。
しまりのいい腰といい、反応といい、何度抱きしめても飽きることがない。
「は・・はぁ・・・・はあ・・・ああぁん・・・・」
彼女の声と、こみ上げてくる快感に押し流されるように絶頂を迎えた。
荒い息を繰り返して、彼女の上にかぶさるように脱力する。
これでまた彼女との時間が終わってしまう。
次は、いつ誘えるだろう・・・
職場で気になる噂を聞いた。
「ハボック少尉って、少尉と付き合ってたんですか?」
途端に耳を傾けてしまったのは、恋人の名前が出てきたから。
過去の恋愛を聞いたことがないからか、意外な接点を知って動揺した。
「うん・・・まあ、士官学校の頃な。なんだよフェリー曹長、どこで聞いたんだよ」
口ごもるようにハボックが答える。
その答えは少なからずショックだった。
「二人仲いいから付き合ってるのかなって言ったら、ブレダ少尉が教えてくれたんですよ」
「ブレダぁ・・・」
「いいじゃんか。隠すことでもないだろ」
フェリーの言葉にハボックがブレダを睨むと、悪気なくブレダが答える。
「なんで別れたんですか?もったいないですよ、あんな人なかなかいませんよ」
「ああ・・・それはなぁ・・・自然消滅?」
なんとか穏便に話を終わらそうとするハボックに、ブレダが容赦なく言う。
「一年くらいの友達期間を経てつきあったものの、最高学年のお前は卒業が危うくて。
勉強だ補修だ実習だって忙しくて構ってあげられなくなったんだよな」
「なんでお前が詳しく言うんだよ!」
「ついでに言えば、卒業一年目も忙しくて、そのころ最終学年だった彼女も多忙。
お互い連絡が薄くなってきたとこに、ハボックに新しい女ができたんだよ」
「ええええ!?浮気ですか!!」
「違う!!!」
むきになってハボックが言う。
「ブレダ、お前も知ってるだろ!あの女は・・・ただの勘違いで、恋人とかじゃ!」
「でもが誤解してもそのままにして・・・で、自然消滅だろ?」
「誤解して、やきもちとかやいてくれるかと思ったんだよ。全然だったけど!」
それは・・・なんだか私がハボックと同じ立場でもありえそうな気がした。
私に他に女が出来たと誤解しても、譲って去っていくような潔さ。
そんな姿を見せられたら、私への気持ちはその程度かとがっかりしてしまいそうだ。
「じゃあ、ハボック少尉と少尉は、嫌いで別れたわけじゃないんですね」
「そうだよ・・・なんでフェリー曹長はそんなの気にしてんだ?」
愚問だ。フェリー曹長はが好きに違いない。
「フェリー曹長はに可愛がられてるうちに好きになったんだろ」
「ブ・・・ブレダ少尉!!なんてこと言うんですか!」
「え!?そうなのか!?確かにはフェリー曹長を弟みたいにかまってたけど・・・」
「やめてくださいよぅ!もう、なんなんですかこの職場!」
半泣きのフェリー曹長に少し同情した。
ブレダも何が目的か知らないが容赦ない。
「これは・・・早くしないと誰かに取られるのも時間の問題か・・・」
「ハボック少尉!?」
「悪いけど、譲るつもりはないからな、フェリー曹長!」
「えええ!?何をですか!?」
その光景を見ていたブレダ少尉が、フンと鼻をならす。
「人の恋路は面白れぇな」
こいつ・・・怖い奴だ・・・
「周りのライバルを走らせて疲れさせて、まんまと彼女を横から奪うつもりですね・・・」
「・・・・・ファルマン准尉もだろ。気が合うじゃねえか?」
「この職場は気の合う人が多くて困ります」
ブレダとファルマンの会話で、嫌な胸騒ぎがした。
が私のものだというのは、実はとても奇跡な話ではないだろうか。
たくさんの男に狙われてる彼女。
誰にも見えない場所で閉じ込めてしまいたいと思った。
「・・・っと。俺ちょっとヤボ用」
「どこ行くんだ?ハボック」
「違う部署の書類混じってた。届けてくる・・・これ以上あんまり変なこと言うなよブレダ」
ハボックが釘を刺して、オフィスを出て行った。
執務室に戻るフリをして、後ろをつける。
案の定、行き先はの部署。
そこで親しげな二人の会話を聞いてしまった。
は私には見せない顔をハボックに見せている・・・・気持ちが暗く沈むのが分かった。
言い訳を聞きたくて、執務室から出ずに待っているのに、は何も言ってこない。
最近仕事が忙しいのは知っていた。
何日も帰れなかったり、残業をしたりして無理をしていた。
それでも、昨日誘ったら拒まずにそれを受けた。
は私の無理な要求も、大きな包容力で包んでしまう。
そして自分は無理をするんだろう・・・私を責めることもなく。
「大佐、今日はこのぶんだけでも必ず処理してくださいね。でないと・・・」
「分かった、中尉。必ずやるから、見張るのはやめてくれ」
「大佐!?どちらに行かれますか?」
「すぐ戻る」
執務室の椅子を蹴って、部屋を出る。
行き先はのオフィス。そろそろ帰るころかもしれない。
途中、前から歩いてくる彼女を見た。
とっさに周囲を確認して、使われていない資料室に入る。
が通り過ぎた瞬間に腕を掴んで引きずり込んだ。
「・・・・大佐!?」
仕事場なのに、という軽い叱責をこめた声。
いつも敬語敬称はやめろとあれほど言っているのに・・・
職場だからと譲らないのは、真面目で一途な彼女らしい。
ハボックと飲みに行くことを正すと、途端に嬉しそうな顔。
まだ、彼のことがすきなんだろうか?
「大佐もご一緒しますか?」
そんな言葉には拍子抜けした。
二人きりでハボックと会いたいわけではないのだろうか?
へにゃりとした笑顔のに、今日寄るように言うと、それも受け入れてきた。
毎日激務で、今日からようやく通常業務形態に戻れて、早く休みたいだろうに・・・
それを分かって無理をさせる自分は、独占欲が思ったより強いらしい。
でも、確か明日はは公休のはず。
泊まらせて、明日一日私のアパートで留守番でも構わない。
彼女に用事がなければだけど。
家に来たら、ハボックのことや、いろんな話をしよう。
過去の恋愛は聞かないのが大人のルールだと思っていたが、不安は一刻も早く解消したい。
の気持ちを知りたかった。確認したくて、早く会いたかった。
