side roy・・・2
(side heroine・・・2 at the same time)
執務が終わって、急いで帰った。
思ったより時間がかかってしまった。はもう来ているだろうか?
でも帰宅しても合鍵を持っているはずのは部屋にいない。
静かで冷たい温度の部屋で、が来るのを待とうと決めた。
簡単に食事をすますと、コーヒーを飲みながらソファで読みかけの本を開く。
ソファにもたれながらふと時計を見ると、ずいぶん遅い。
は時間を気にする子だから、あまり遅くならないうちに来ると思ったのに・・・
それとも、ハボックと過ごす時間が、そんなに楽しいんだろうか?
胸がざわつくような、こんな嫉妬の気持ちはキライだ。
わざと時計を避けるように横になる。
そのままうたたねしてしまって、目が醒めてもういちど時計をみる。
部屋は相変わらず静かで、が来た様子はない・・・
時計は、夜中の2時を指していた。
驚いて跳ね起きる。なぜは来ていない?何かあったんだろうか。
今まで私と交わした約束を破るようなことは一度もなかった。
そのあとは、まるで眠れなかった。
明け方、日が昇るのを待って上着をはおる。
簡単に準備を済ませて、部屋を出た。時計はまだ5時半を過ぎたところ。
今の部屋に電話をかけて、もし寝ていたら・・・・それに、近所迷惑になる。
ためらって電話のほうを見たものの、思い直しての部屋の合鍵を握り締めた。
何の連絡もないなんての性格からは考えられなかった。
に何かあったとしか思えない。祈るような気持ちで、街に出た。
最初にの家へ、その後は常連の飲み屋へ。
足は自然と早足になり、いつしか駆けていた。
のアパートは反応がなく、合鍵で入っても帰宅した様子がない。
常連の店はとっくに閉まっていて誰もいない。
時計は6時を回っていた。
朝の寒い時間なのに、走り回ってうっすら汗までかいている。
吐く息の白いのは、最近温かくなってきたけど、まだ冬の名残があるということ。
さすがに走るのはやめて、歩く速度もおとした。
もう一回職場から電話を入れて、それでもつかまらなければ明後日の出勤を確認するか?
でも本当に、何かあったんだとしたら、対応は一刻も早くしないと手遅れになる。
最近彼女が残業で走り回っていた件は、テロ組織の情報収集と関係があった。
それが原因なら、彼女の身が本当に危ない。
ハボックは何時まで彼女と一緒にいたんだろうか?
気が付いたら足はハボックのアパートへ向かっていた。
不安を抱きながら歩く先に現れた光景に、思わず足を止める。
息がとまり目の前を凝視する。まだ距離があって声まではわからないが、あれは・・・
ハボックの部屋からが出てきた。
昨日と同じ服。そして・・・ハボックが彼女を抱きしめる。強く締め付けるように・・・
しばらくそうして動かない二人の重なる様を見せられて、目を疑った。
ようやく離したハボックが、大きく深呼吸するに話しかける。
それを返すの、自然な様子は、私の頭を混乱させた。
後ずさる。そのまま逃げるように駆け出した。
見たくないものを、見た。今見たものが頭の中でぐるぐる回る。
怖い。彼女を失うことが、現実に起こりそうで、とても怖かった。
部屋に戻って、バタンと勢い良く扉を閉めた。
朝の明るい日差しが差し込み、周りが活動し始める時間なのに、
自分の時間はもうそのまま止まってしまったような気がした。
無意識に、汗まみれの服を脱ぎシャワーを浴びる。
頭に水を浴びて冷静に考えようとする。
走った余韻で、まだ息が整わない。動揺している。
さっぱりとした感覚も、不安でどす黒い感情からは逃れさせてはくれなかった。
少し考えて、電話をかけてみる。の番号は、もう暗記してしまった。
少しのコール音の後にが出る。
『・・・・もしもし』
「・・・・おはよう。私だ」
『あ・・・・・おはようございます・・・昨日は、すみませんでした』
「初めて約束を破ったね。言い訳を聞こうか?・・・あと、敬語は直しなさい」
ハボックの家に泊まったと、正当な理由があるなら正直に言って欲しい。
やましいことがないなら・・・・どうか。
『それは、その・・・お酒に飲まれてしまって・・・記憶があまり』
「ハボック少尉が一緒にいたのに?」
『・・・・少尉にも迷惑かけたみたい・・・それに・・・』
「それに?」
『ううん、ごめんなさい・・・なんでもない・・・直接ロイの顔を見て話すわ』
歯切れの悪い。言葉を隠されたら、余計に気になる。
でも、連日の疲れに酒が悪く作用したのは理由として納得できた。
「・・・・無事だったなら、いい。心配したからね」
『ごめんなさい・・・』
「出勤前に、寄ってもいいか?顔をみてから、司令部に行く」
『え?え、ええ・・・・もちろん。待ってるわ』
歯切れの悪さは最後まで続いて、電話を切った私は準備を済ませてすぐに家を出た。
まっすぐの家へ向かう。
さっき歩いた道を、もう一度たどる。
見えてくる同じ景色。さっきよりも更に明るい。なのに晴れない気持ち。
どんよりというよりは、切羽詰るような不安感。
「・・・・・ロイ。早かったのね」
入口で出迎えてくれる愛しい恋人。
その姿を認めて、部屋に入ると同時に抱きしめる。
「・・・ん、ロイ・・・どうしたの?」
「昨日は本当に・・・どうしたかと心配した。良かった、無事で」
唇を貪るように口付けて、その細い身体を思い切り抱きしめた。
見上げてくる瞳は、いつもの彼女と同じ曇りもやましさもない一途なもので、
今朝見たことも幻か勘違いじゃないかと思えるほど。それが嬉しかった。
「ロイ。心配かけてごめんなさい。私、言わなきゃいけないことが・・・・」
彼女の行動はやましいことはない、そう確信が持てた言葉だった。
きっとハボックの家に泊まったとしても、何もなかったに違いない。
・・・・今朝見た光景が、どんな理由でも。
見上げる瞳を素通りして、豊満な胸に手を伸ばし服の上から口付ける。
手のひらで彼女の肋骨を脇から触れる。そのまま流れるように背中に手を回す。
壁に押し付けて愛撫しだす私の手を感じて、不意打ちに逆らえず甘い声を出す彼女。
「んっ・・・ロイ、お願い。先に話を、きいて・・・・・・・・は、んっ・・・」
乳房を手のひらで掴み、指端で弄んでいた乳首に感じて洩れる声。
それを聞いていたいと思う気持ちもあったが、あえて話を求めた彼女に注意を向けた。
手を止めて彼女を見る。呼吸が乱れて上気し始めた頬は、ばら色で艶っぽい。
なのに、話を促そうとしたそのとき、気付いてしまった。
見たくなかったもの。
シャワーを浴びたばかりのような、石鹸の香り。濡れた髪。
そして髪の毛に隠れた、首筋の痕・・・・
「・・・・・・・ハボックの部屋に、泊まったのか」
「ロイ?」
「ハボックの部屋に泊まって、彼のベットで寝て、彼の朝食を食べたのか?」
「ロイ、それは・・・そうだけど、でも」
必死の眼差しに、衝撃を受ける。そうだ、と認めた言葉が頭に響いた。
否定してくれるものと思っていたのに。馬鹿なことと、笑い飛ばしてくれると・・・
「・・・・・まさか・・・本当にそうだったなんて・・・」
「待って、違うの!話を聞いて」
呆然として、の言葉も頭に入らなかった。
彼女を無視して、その腕を掴んで引っ張る。
痛みに彼女が顔をしかめたのが分かった。でも何も抵抗しない。こんな時まで。
ベットルームにずかずかと入り込み、彼女をベットに放り投げる。
ボスッと音がして彼女が簡単に投げ出される。
その上に乗って、組み敷く。彼女は泣きそうな顔で、私を見上げている。
「ごめんなさい・・・傷つけるようなことをして。でも信じて、何もなかったの!」
「同じベットに寝て男と女が何もないなんて、本当に信じると思うのか?」
「誤解なの!・・・・私は、」
「・・・・この痕は、ハボックがつけたものか?」
首筋に手を伸ばす。彼女が絶望したように目を見開く。涙をためて。
私は無表情のまま彼女の服を剥ぎ取り始める。
彼女はそれに気付いて、身体を固くするが、やっぱり拒まない。
耐えるように顔を横にそらした。そんな様子に、苛立ちが募る。
すべての衣類を取り除き、生まれたままの彼女の姿を眼下に見る。
朝日にさらされる真っ白な肌。しみひとつなく輝くそれを、ハボックも見たのだろうか?
「彼は、昔の恋人なんだろう?どんなふうに君を抱いた?」
その弾むような肌を手のひらで愛撫しながら、責める言葉を言う。
その台詞を聞いて、涙をためた瞳が一層見開いた。なぜ知っているのか、と問いたげな・・・
それを無視して、自分を傷つけるに違いないのに、他の男の触れた証を彼女の身体に探る。
白い肌を撫で回す。明けたばかりの太陽に照らされて輝く肌。
胸も、腹部も。すべるように下に触れていく。丹念に、大腿も膝も、足の指まで。
誰かに荒らされた形跡はなく、かすり傷すら見当たらない。
うなじと背中、それに続く曲線。綺麗な細い足。
腰を少し浮かせて足を開き内腿をなぞるように撫で、その間の薄い茂みまで指を伸ばす。
ひとつひとつ確認するように口付けて、唇を触れ舌を這い、手のひらで撫でる。
優しい愛撫に感じる彼女が、小さく震えた。
「ロイ・・おねが、・・・ぁっ、信じて・・・」
すべてをさらけだした裸体は、首筋の跡を除けば綺麗に白く、何のしるしもなかった。
それでも喘ぎに混じる彼女の言葉は私には届かない。
「・・・今の今まで、信じてた・・・この首筋の痕を見るまで」
私のなすがままにされている身体。抗わない彼女に優しく触れる。
感じる彼女の姿に、自分までどうにかなりそうだ。
なんて熱く濡れているんだろう。
――――――――それがハボックも知っている彼女の姿だとしたら?
そこに思考が辿り着くと、彼女とひとつになるのがためらわれた。
「ぁんっ、ロイ。ち、がう・・・ロイ!・・・」
何度も私の名前を呼ぶ彼女。喘ぎ声も息すらも潜めるいつもの姿より、ずっと必死な。
彼女はどんな言い訳をしてくれるつもりなんだろう?
私を納得させられる自信はあるんだろうか。別れたくないと思ってくれている?
彼女の双丘を突き上げて、後ろから入れた。
背中の綺麗なライン。腰から続く肩への線が好きだった。細くて白くてやわらかい。
何度も何度も責めて、熱く締まった彼女を感じて、こみ上げる愉悦に浸る。
・・・・言い訳なんか出来るわけがない。
それが悲しくて、でも離したくないと思った。
「・・・ロイ、おねがぃ・・・分かって・・・」
「何を?・・・・・今朝、君を探して街を走り回った・・・自分を、滑稽だと思うよ」
途切れ途切れに訴えかけてくる彼女が、止めを刺されたかのように身を強張らせた。
喘ぎ声と泣き声に混じり、しゃくりあげる声。
本当に涙を流して泣いている・・・・
ことが終わると彼女をベットに投げ出したまま、自分の衣服を整える。
裸のまま、私に放り出されたまま、体をベットにうずめて泣き続ける姿を見つめた。
しゃくりあげる声が悲しい。
「何か、言いたいことがあるなら聞く。今からでも話せることがあるならね」
「わ、たし・・・・っく、ほんとに、・・・信じて、ロイ・・・ぅ」
泣き声に混じり、言葉にならない声を聞く。
痛ましく思う反面、傷ついた心を癒すには、それはなおさら心がすさんだ。
「・・・・・・仕事が終わったら、また寄る。そのときにもう一度話をしよう」
潤んだ瞳が、私を見上げてきた。
それを見下ろして、何の感情もなく私は伝える。
「今朝、ハボックの家を出る君を見たよ。・・・・彼と抱き合っていた、間違いないね」
目を見開いて、悲しげに私を見つめる彼女の顔。
乱れた髪と、涙で濡れた頬。白く輝く肌と細い身体が無造作にそこに投げ出されている。
それをそのままにして、私は彼女の部屋を出た。
どうしたらいいか、今日一日で考えがまとまるか自信はなかった。
